お市の方 |
さらぬだに打ちぬる程も夏の夜の 別れをさそふ郭公 |
安国寺恵瓊 |
清風払明月 明月払清風 |
伊香賀隆正 |
思いきや千年をかけし山松の 朽ちぬるときを君に見んとは |
伊達政宗 |
曇りなき心の月を先立てて 浮世の闇を照らしてぞ行く |
右田隆次 |
末の露本の雫に知るやいかに つひに遅れぬ世の習ひとは |
宇喜多秀家 |
み菩薩の種を植えけんこの寺へ みどりの松の一あらぬ限りは |
岡谷隆秀 |
時有りて自から至り時有りて又還る 清風水を度り明月天に在り |
岡部隆豊 |
白露の消えゆく秋の名残とや しばしは残る末の松風 |
垣並房清 |
勝敗の迹を論ずること莫かれ 人我暫時の情一物不生の地 山寒うして海水清し |
蒲生氏郷 |
限りあれば吹かねど花は散るものを 心みじかき春の山かぜ |
蒲生大膳 |
まてしばし我ぞ渉りて三瀬川 浅み深みも君に知らせん |
吉川経家 |
武夫の取り伝へたる梓弓 かへるやもとの栖なるらん |
宮原景種 |
逃るまじ処を兼て思い切れ 時に至りて涼しかるべし |
駒姫 |
うつヽとも夢とも知ぬ世の中に すまでぞかへる白川の水
罪をきる弥陀の剣もかかる身の なにか五つのさわりあるべき |
熊谷直之 |
あはれとも問ふひとならでとふべきか 嵯峨野ふみわけておくの古寺 |
桂林院 |
黒髪の乱れたる世にはてしなき おもひに消ゆる露の玉の緒 |
高橋鑑種 |
末の露もとの雫や世の中の おくれさきたつならひなるらん |
高橋紹運 |
流れての末の世遠く埋もれぬ 名をや岩屋の苔の下水 |
高橋紹運 |
かばねをば岩屋の苔に埋みてぞ 雲ゐの空に名をとゞむべき |
黒川隆像 |
夢亦是夢 空猶是空 不来不去 端的の中に在り |
黒田孝高 |
おもひおく言の葉なくてつひに行く 道はまよはじなるにまかせて |
今川氏真 |
なかなかに世をも人をも恨むまじ 時にあはぬを身の科にして |
佐久間盛政 |
世の中をめぐりもはてぬ小車は 火宅のかどをいづるなりけり |
佐々成政 |
この頃の厄妄想を入れ置きし 鉄鉢袋今破るなり |
斎藤義龍 |
三十餘歳 守護人天 刹那一句 佛祖不傳 |
斎藤道三 |
捨ててだにこの世のほかはなき物を いづくかつひのすみかなりけむ |
細川ガラシャ |
ちりぬべき時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ |
細川高国 |
絵にうつし石を作りし海山を のちの世までも目かれずや見ん
なしといひありと又いふことの葉や 法のまことの心なるらん |
三浦義意 |
君が代は千代に八千代もよしやただ うつつのうちの夢のたはぶれ |
三浦義同 |
討つ者も討たるる者も土器よ くだけて後はもとの塊 |
三原紹心 |
うつ太刀のかねのひゞきは久かたの 天津空にも聞えあぐべき |
三好義賢 |
草枯らす霜又今朝の日に消えて 報のほどは終にのがれず |
三好長治 |
三好野の梢の雪と散る花を 長治とやは人のいふらむ |
山崎隆方 |
ありと聞きなしと思うも迷いなり 迷いなければ悟りさえなき |
柴田勝家 |
夏の夜の夢路はかなきあとの名を 雲井にあげよ山ほととぎす |
宗像氏貞 |
人として名をかるばかり四十二年 消えてぞ帰るもとの如くに |
小幡義実 |
宝剣を呑却して名弓を放下す 只斯の景のみ有り一陣の清風 |
小野木重勝室 |
鳥啼きて今ぞおもむく死出の山 関ありとてもわれな咎めそ |
少弐政資 |
花ぞ散る思へば風の科ならず 時至りぬる春の夕暮
善しやただみだせる人のとがにあらじ 時至れると思ひけるかな |
松井康之 |
やすく行道こそ道よ是やこの これそまことのみちに入けり |
上杉謙信 |
極楽も地獄もともに有明の 月ぞこころにかかる月かな
極楽も地獄も先はありあけの 月の心にかかるくもなし
四十九年一夢の栄 一期栄花一盃の酒
四十九年夢中酔 一生栄耀一盃酒 |
織田信孝 |
むかしより主をうつみの野間なれば むくいを待てや羽柴筑前 |
新納忠元 |
さぞな春つれなき老とおもうらん ことしも花のあとに残れば |
諏訪頼重 |
おのづから枯れ果てにけり草の葉の 主あらばこそ又も結ばめ |
清水宗治 |
浮き世をば今こそ渡れもののふの 名を高松の苔に残して |
石川五右衛門 |
石川や浜の真砂子はつくるとも 世に盗人の種はつくまじ |
石田三成 |
筑摩江や芦間に灯すかがり火と ともに消えゆく我が身なりけり |
赤松義村 |
立ちよりて影もうつさじ流れては 浮世を出る谷川の水 |
千 利休 |
ひっさぐる我が得具足の一つ太刀 今此時ぞ天に抛つ |
前野長康 |
限りある身にぞあづさの弓張りて とどけまいらす前の山々 |
相良義陽 |
思いきやともに消ゆべき露の身の 世にあり顔に見えむものとは |
足利義輝 |
五月雨はつゆかなみだか時鳥 わが名をあげよ雲の上まで |
太田隆通 |
秋風の至り至らぬ山陰に 残る紅葉も散らずやはある |
大谷吉継 |
契りあれば六つの衢に待てしばし 遅れ先だつことはありとも |
大嶋照屋 |
仮初めの雲隠れとは思へ共 惜しむ習ひそ在明の月 |
大嶋澄月 |
澄む月の暫し雲には隠るとも 己が光は照らさゞらめや |
大内義長 |
誘ふとてなにか恨みん時きては 嵐のほかに花もこそ散れ |
大内義隆 |
さかならぬきみのうき名を留めをき 世にうらめしき春のうら波
討人も討るゝ人も諸共に 如露亦如電応作如是観 |
大内晴持 |
大内を出にし雲の身なれども 出雲の浦の藻屑とぞなる |
中村文荷斎 |
契あれや涼しき道に伴いて 後の世までも仕へ仕へむ |
朝倉義景 |
七顛八倒 四十年中 無他無自 四大本空 |
長野業盛 |
春風に梅も桜も散りはてて 名のみ残れる箕輪の山里 |
鳥居景近 |
先立ちし小萩が本の秋風や 残る小枝の露誘うらん |
鶴姫 |
わが恋は三島の浦のうつせ貝 むなしくなりて名をぞわづらふ |
徹岫宗九 |
殺仏殺祖 遊戯神通 末期一句 猛虎舞空 |
天野隆良 |
不来不去 無死無生 今日雲晴れて 峰頭月明らかなり |
島津義弘 |
春秋の花も紅葉もとどまらず 人も空しき関路なりけり |
島津歳久 |
晴蓑めが玉のありかを人とは々 いざ白雲の末も知られず |
筒井順慶 |
根は枯れし筒井の水の清ければ 心の杉の葉はうかぶとも |
筒井定慶 |
世の人のくちはに懸る露の身の 消えては何の咎もあらじな |
陶 晴賢 |
なにを惜しみなにを恨まんもとよりも このありさまの定まれる身に |
二条良豊 |
秋風や真葛原に吹き荒れて 恨みぞ残る雲の上まで |
尼子勝久 |
都渡劃断す千差の道 南北東西本郷に達す |
祢宜右信 |
風荒み跡なき露の草の原 散り残る花もいくほどの世ぞ |
波多野秀治 |
おふけなき空の恵みも尽きしかど いかで忘れん仇し人をば |
波多野秀尚 |
よはりける心の闇に迷はねば いで物見せん後の世にこそ |
武田勝頼 |
朧なる月もほのかに雲かすみ 晴れてゆくへの西の山の端 |
武田信玄 |
大ていは地に任せて肌骨好し 紅粉を塗らず自ら風流 |
武田信勝 |
あだに見よ誰も嵐の桜花 咲き散る程は春の夜の夢 |
平塚為広 |
名のためにすつる命は惜しからじ つひにとまらぬうき世と思へば |
別所治忠 |
君なくば憂き身の命何かせむ 残りて甲斐の有る世なりとも |
別所長治 |
今はただ恨みもあらじ諸人の いのちに代はるわが身と思へば |
別所友之 |
命をもおしまざりけり梓弓 すゑの世までも名の残れとて |
豊臣秀吉 |
つゆとをちつゆときへにしわかみかな なにわの事もゆめの又ゆめ
露とちり雫と消える世の中に 何とのこれる心なるらん |
豊臣秀次 |
月花を心のままに見つくしぬ なにか浮き世に思ひ残さむ |
北条氏照 |
天地の清き中より生れ来て もとのすみかにかえるべらなり |
北条氏政 |
吹くとふく風な恨みそ花の春 もみぢの残る秋あればこそ
雨雲のおほへる月も胸の霧も はらひにけりな秋のゆふかぜ
我身いま消とやいかにおもふべき 空より来りくうに帰れば |
明智光秀 |
順逆無二門 大道徹心源 五十五年夢 覚来帰一元 |
毛利元就 |
友を得て猶ぞうれしき桜花 昨日にかはるけふの色香は
をしむ夜の月は入ても鷲の山 雲よりたかき名やはかくるる |
木付統直 |
古へを慕うも門司の夢の月 いざ入りてまし阿弥陀寺の海 |
野上房忠 |
生死を断じ去って 寂寞として声なし 法海風潔く 真如月明らかなり |
薬師寺元一 |
めいとには能わか衆のありけれは おもひ立ぬる旅衣かな |
立花道雪 |
異方に心ひくなよ豊国の 鉄の弓末に世はなりぬとも |
冷泉隆豊 |
みよやたつ雲も煙も中空に さそひし風のすえも残らず |